house tir –音の居場所 楽器の時間–
生活の一部として楽器があること。
音楽と縁遠かった私から見れば、それは特別な事のように映ります。
しかしヒアリングで聞いた現実は…
「夜の箱崎埠頭で車を締めきってトロンボーンを吹いてると、たま~に警察がドアをノックするんです(笑)」と、ご主人。かたや奥様は子育てに専念しようと楽器は仕舞っているらしく、演奏をつづけるのはこうも難しいものかとうなりました。
そこで【tir】の設計は、音楽との向合い方を根底に据えて、周辺環境やお母様との同居について検討しました。ウォークインクローゼットはロングトーン(吹奏楽の練習方法)が可能な仕様とし、眺望がひらける北側の1階はダイニング、2階はリビング。陽当りのよい南側の1階にお母様の和室を配し、銘々が居場所を使い分ける立体的なゾーニングをこころがけています。
竣工後の訪問では、トロンボーンとユンフォニアムで合奏していただきました。低音パートのみの曲を聴いたのは初めてで、それはふんわりと優しいお二人の空気が音となって伝わってきました。
やはり、音楽ができる人生は、何ものにも代え難いと感じます。
西側より全景。周辺建物との調和を意識した切妻屋根の外観。
玄関を開けると、奥の線路や街並みまで視線が抜ける。
玄関よりキッチンとダイニングを見る。
ダイニングを見る。2階リビングのため、来客はダイニングで対応する。
2階ピアノコーナーより、ダイニングを見る。
ロフトより、2階リビングを見る。吹抜を介して、ダイニングと立体的につながる。
物干しスペースを兼ねる2階廊下。
ウォークインクローゼットでの練習風景。洋服も吸音材の役割を果たし、防音効果を高める。
ダイニングで演奏を聴く。ピアノコーナーはダイニングに向けたステージとなる。
西側正面より夕景を見る。西日と防音を考慮し、開口部は最小限に。
2階リビングの夕景。
夕食の風景。キッチンに立ち、ダイニングのにぎやかな様子を切取る。
house tir –音の居場所 楽器の時間–
場所:福岡県糟屋郡
コーディネート:プロトハウス事務局
設計:人の力設計室
施工:有限会社筑羽工務店
写真:針金洋介